大阪地方裁判所 平成5年(わ)3267号 判決
本籍
大阪府守口市佐太東町一丁目二八四番地の一八
住居
同府同市同町一丁目二二番一一号
建設残土処理業
佐々木孝英
昭和八年六月二〇日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官熊谷保出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金一四〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、大阪府守口市佐太東町一丁目二二番一一号において、大豊建設の名称で建設残土処理業を営んでいる者であるが、自己の所得税を免れようと考え、
第一 別紙1の修正損益計算書記載のとおり平成二年分の総所得金額が六六四八万六九四一円であったのに、ことさら過少な金額を記載した所得税確定申告書を作成して、その所得の一部を秘匿したうえ、平成三年三月一五日、大阪府門真市殿島町八番一二号所在の所轄門真税務署において、同税務署長に対し、平成二年分の総所得金額が一一三九万一九〇三円で、これに対する所得税額が二三一万二八〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙3の税額計算書記載のとおり同年分の正規の所得税額二八八八万一〇〇〇円と右申告税額との差額二六五六万八二〇〇円を免れ、
第二 別紙2の修正損益計算書記載のとおり平成三年分の総所得金額が一億一五三七万七〇四〇円であったのに、前同様の方法によりその所得の一部を秘匿したうえ、平成四年三月一六日、前記所轄門真税務署において、同税務署長に対し、平成三年分の総所得金額が二二三〇万一一五八円で、これに対する所得税額が六八一万七五〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙3の税額計算書記載のとおり同年分の正規の所得税額五三三二万二五〇〇円と右申告税額との差額四六五〇万五〇〇〇円を免れた。
(証拠の標目)
注・以下において、証拠中、末尾の括弧内に記載した漢数字は、証拠等関係カード(請求者等検察官)の証拠請求番号を示している。
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書二通(五二、五三)
一 佐々木しず子の大蔵事務官に対する質問てん末書三通(四八ないし五〇)
一 阪本幸博の大蔵事務官に対する質問てん末書(五一)
一 大蔵事務官作成の査察官調査書三四通(記録第二三-三号、同第二三-四号、同第二三-五号、同第二三-六号、同第二三-七号、同第二三-八号、同第二三-九号、同第二三-一〇号、同第二三-一一号、同第二三-一二号、同第二三-一三号、同第二三-一四号、同第二三-一五号、同第二三-一六号、同第二三-一七号、同第二三-一八号、同第二三-一九号、同第二三-二〇号、同第二三-二一号、同第二三-二二号、同第二三-二三号、同第二三-二五号、同第二三-二六号、同第二三-二七号、同第二三-二八号、同第二三-三〇号、同第二三-三一号、同第二三-三二号、同第二三-三三号、同第二三-三四号、同第二三-三五号、同第二三-三六号、同第二三-三八号、同第二三-四一号)(九ないし二九、三一ないし三四、三六ないし四二、四四、四六)
一 大蔵事務官作成の証明書(青色申告書提出承認の取消についてのもの)(四七)
一 大蔵事務官作成の「所轄税務署の所在地について」と題する書面(六)
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の査察官調査書二通(記録第二三-一号、同第二三-二九号)(七、三五)
一 大蔵事務官作成の証明書(平成三年三月一五日に申告した所得税確定申告書写についてのもの)(三)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(平成二年一月一日から同年一二月三一日までの期間についてのもの)(一)
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の査察官調査書四通(記録第二三-二号、同第二三-二四号、同第二三-三七号、同第二三-四〇号)(八、三〇、四三、四五)
一 大蔵事務官作成の証明書(平成四年三月一六日に申告した所得税確定申告書写についてのもの)(五)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(平成三年一月一日から同年一二月三一日までの期間についてのもの)(二)
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、いずれも所定の懲役と罰金刑とを併科し、かつ、各罪につき情状により同条二項を適用し、以上の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一四〇〇万円に処し、同法一八条により、右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
(量刑の理由)
本件は、建設残土処理業を営んでいた被告人において、二年度にわたり、合計七三〇七万円余りの所得税を脱税した事案であり、脱税額としても少なくなく、ほ脱率も二年度平均で約八八・九パーセントと高率で、納税義務に大きく違反する犯行であり、被告人の責任には重いものがある。
しかし、被告人において、本件ほ脱に係わる所得税本税は事業税等の本税も含めて納付済みで、附帯税についても納付委託により分割納付していること、また、被告人は、本件摘発後、事実関係を認めて反省も認められ、新たに依頼した税理士のもとで経理処理体制も改善し、再過なきことを期していること、さらに、銀行等からの多額の借入を抱えている被告人の現在の資産状況のほか、被告人自身や妻の健康状態等しん酌すべき事情も少なくない。
そこで、これら有利不利一切の事情を考え合わせ、被告人を主文掲記の懲役及び罰金刑に処し、懲役刑についてはその刑の執行を猶予する。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 竹田隆)
別紙1 修正損益計算書
(総所得金額)
〈省略〉
(事業所得)
〈省略〉
(総合短期譲渡所得)
〈省略〉
(総合長期譲渡所得)
〈省略〉
別紙2 修正損益計算書
(総所得金額)
〈省略〉
(事業所得)
〈省略〉
修正損益計算書
(総合短期譲渡所得)
〈省略〉
(総合長期譲渡所得)
〈省略〉
(分離短期譲渡所得)
〈省略〉
別紙2 税額計算書
〈省略〉